東京高等裁判所 昭和26年(う)4580号 判決
本件起訴状記載の公訴事実は「被告人は法定の除外事由がないのに昭和二十四年四、五月頃茨城県東茨城郡磯浜町寿町二丁目二千三百八十五番地自宅(当時)において拳銃一丁を不法に所持したものである」というにあるに対し、原判決は、右訴因の追加変更の手続を経ないで、「被告人は法定の除外事由がないのに昭和二十三年四月頃樫村某という者から拳銃一丁を六百円で買い受け、その頃から昭和二十四年十一月頃までこれを肩書本籍地の当時の住居その他において不法に所持していたものである」との事実を認定していることは所論のとおりである。
しかしながら、物の所持はその物に対する実力的支配関係発生のときからその支配関係喪失のときまで存続すべきものであつて、法律上これを一個の所持と看做すべきものであるから、これを表示するに当つて所持の開始のときからその喪失のときまでの経過を敍述してこれを表示しても、またその所持の状態継続中の或る一定の時と場所とを限定してこれを表示しても、その所持そのものの同一性はそこなわれないものというべきである。これを本件についてみるに、原判決は被告人が本件拳銃入手のときから昭和二十四年十一月までの所持の状態を判示したのに対し本件起訴状記載の公訴事実は右所持の状態継続中である昭和二十四年四、五月頃における本件拳銃所持の状態を掲げたものであることが認められるのであつて、その敍述の態様を異にしてはいるが、その所持そのものの同一性はこれを認めるに難くないのである。したがつて原判決認定の事実は起訴状記載の訴因をそのまま認定したものであるから原判決は審判の請求を受けない事件について判決をした違法があるとの所論は到底採用し難い。
論旨は理由がない。
(註 本件は量刑不当により破棄自判)